なぜそうなるか
出張買取で売ると決めた品物は、クーリング・オフの期間中なら渡さなくていい——特定商取引法は「引渡しを拒むことができる」と定めていました
押し入れの奥にしまったままの品物を、家まで来て見てもらえる。出張買取の案内は、持ち運ぶ手間を考えると便利に映ります。
査定が終わり、金額に納得して売ると決めた。そこで業者から「では今日このまま持ち帰ります」と言われたら、どうするでしょうか。
一度売ると決めた以上、その場で渡すものだと思い込んでしまうかもしれません。ただ、あとで家族と話して、やはり手放したくないと思い直すこともあります。
品物が手を離れたあとで気が変わったら、どう取り戻すのか。業者がすでに別の人へ渡していたらどうなるのかも、気になるところです。
消費者庁の特定商取引法ガイドには、家に来た業者が物を買い取る取引を「訪問購入」と呼び、品物の渡し方にまで決まりを置いた頁があります。そこで、この頁と特定商取引法の条文を開き、売ると決めたあとの品物の扱いを中心に読み比べました。
特定の業者を選ぶための記事ではなく、買取価格の相場も扱いません。自分の取引に当てはまるかどうかは、最後に必ず原文や相談窓口で確かめてください。
・家に来た業者が物を買い取る取引は、特定商取引法で「訪問購入」と呼ばれている
・業者は勧誘の前に、氏名や買い取ろうとする物の種類を告げる決まりがある
・頼んでいない人への勧誘や、査定を超えた勧誘は、法に抵触すると消費者庁は書いている
・クーリング・オフの期間中は、売った側は品物の引渡しを拒むことができる
・期間中に品物が第三者に渡ったときは、業者に通知の決まりがある
出張買取は、法律の上では何と呼ばれているの?
家まで来てもらって売るのは、店に持っていくのと同じ扱い?
消費者庁の特定商取引法ガイドの「訪問購入」の頁で、定義はこう示されます。
買う側が業者で、売る側が家の人という取引です。頁の注によれば、政令で挙げられた一部の物品は対象から外れます。「訪問購入」とは、購入業者(※1)が、店舗等以外の場所(例えば、消費者の自宅等)で契約を締結等して行う物品(※2)の購入のことをいいます。
業者は、勧誘の前に何を告げることになっている?
同じ頁は、業者が最初に告げる事項として、氏名(名称)、勧誘をする目的であること、買い取ろうとする物品の種類の3つを挙げています。
事業者は、訪問購入をしようとするときは、勧誘に先立って、相手方に対して以下のことを告げなければなりません。
呼んでいないのに勧誘されたら?
「近くを回っているので、何か売る物はありませんか」と訪ねてこられたら?
禁止の主語は業者です。条文(第58条の6第1項)の文言を引きます。
購入業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、営業所等以外の場所において、当該売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはならない。
どんな場面がこの禁止に当たるのか。消費者庁の頁の例はこうです。
査定を頼んだことは、勧誘を頼んだことと同じには扱われていません。断ったあとの扱いにも決まりがあります。いわゆる飛込み勧誘や、単に相手方から査定の依頼があった場合に、査定を超えて勧誘を行うことは、法に抵触することになります。
また、相手方が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続することや、その後改めて勧誘することが禁止されています。
売ると決めた品物を、その場で渡さないといけないの?
契約したのだから、言われたとおり今日渡すしかない?
まず期間から。消費者庁の頁による訪問購入のクーリング・オフの説明です。
法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、相手方は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をできます。
そのうえで、訪問購入には品物の引渡しそのものについての決まりがあります。条文(第58条の15)の文言です。
引渡しの日を決めていても、拒めると条文に書かれています。消費者庁の頁は、同じ点を平たい言葉に直しています。申込者等である売買契約の相手方は、前条第一項ただし書に規定する場合を除き、引渡しの期日の定めがあるときにおいても、購入業者及びその承継人に対し、訪問購入に係る物品の引渡しを拒むことができる。
売買契約の相手方は、クーリング・オフ期間内は債務不履行に陥ることなく、事業者に対して契約対象である物品の引渡しを拒むことができます。
業者は、このことを伝えることになっている?
伝える決まりがあります。消費者庁の頁の「物品の引渡しの拒絶に関する告知」の項です。
拒めると知らせるのは、受け取る業者の側の決まりとして置かれています。事業者は、クーリング・オフ期間内に売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受ける時は、相手方に対して当該物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければなりません。
もう渡してしまった品物は、どうなるの?
業者が別の人にもう売ってしまっていたら、戻ってこない?
期間中に品物を第三者へ渡した業者には、売った側への通知の決まりがあります。
事業者は、契約の相手方から物品の引渡しを受けた後、クーリング・オフ期間内に第三者に当該物品を引き渡したときは、以下の事項を、遅滞なく、相手方に通知しなければなりません。
クーリング・オフをしたときの効果には、例外が1つ付いています。
また、クーリング・オフを実行した場合、契約解除の効果は第三者に及ぶことになります(ただし、第三者がクーリング・オフされる可能性があったことについて善意かつ無過失であった場合を除く。)。
お金の側の扱いも同じ頁にあります。受け取った代金を返す場面について、次の一文があります。
第三者に渡ったあとの品物が必ず戻る、とまでは書かれていません。例外の当てはまり方は、この記事では判断していません。代金の利息を返却する必要はありません。また、相手方は損害賠償や違約金を支払う必要もありません。
この記事で確認したこと
・家に来た業者が物を買い取る取引は「訪問購入」と呼ばれる(消費者庁)
・業者は勧誘の前に、氏名・勧誘の目的・物品の種類を告げる決まりがある(消費者庁)
・頼んでいない人への勧誘は禁じられ、査定を超えた勧誘も法に抵触するとされる(特定商取引法第58条の6・消費者庁)
・クーリング・オフの期間中は、引渡しの日を決めていても品物の引渡しを拒める(特定商取引法第58条の15・消費者庁)
・期間中に品物を第三者に渡した業者には、売った側への通知の決まりがある(消費者庁)
よくある質問
引っ越しの片付けで、こちらから業者を呼んだ場合も同じですか
消費者庁の頁は、一部の規定を除いて法が適用されない場合を挙げ、その中に次の場合を含めています。
住居からの退去に際し、売買契約の相手方から取引を誘引した場合
同じ頁によれば、この場合も適用される規定があります。どの規定が残るかは頁の該当部分を読み、迷うときは相談窓口で確かめてください。
クーリング・オフは、どうやって伝えればよいですか
書面で送る場合の送り方は、消費者庁の頁に勧めがあります。
クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことが薦められます。
渡す前に、業者が置いていく書面では何を見ればよいですか
消費者庁の頁は、書面に載せる事項として、物品の種類や購入価格とならべて、クーリング・オフに関する事項と、物品の引渡しの拒絶に関する事項を挙げています。これら2つは赤枠の中に赤字で書く決まりだとも記されています。
この整理が変わる条件
- 消費者庁が特定商取引法ガイドの「訪問購入」の頁を改めた場合(本記事は2026年9月26日に読んだ内容)
- 特定商取引法や、その政令・施行規則が改められた場合
- 対象から外れる物品を定めた政令第34条の内容が変わった場合
出典
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問購入」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorpurchases/
- 特定商取引に関する法律(e-Gov 法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057
品物を渡す前に、業者が置いていく書面の赤枠の中を読み、クーリング・オフと引渡しの拒絶について何と書かれているかを確かめてください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: